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主食は物欲と妄想デス。


by paraplu
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3人のアドルフ、3人の「正義」

かねてより、改めて読みたいなぁと思っていた
手塚治虫著・『アドルフに告ぐ』(全4巻)を取りに実家へ行ったのですが、
思わずその場で完読してしまいました(でももう一度読みたいので持って帰っては来た)。

小学生ぐらいのときには既に家にあったので、それこそ何度も何度も
読んでいるわけですが、こうして間を明けて再読すると、前に感じたのと
違った意味を持って語りかけられているかのよう。
当時の世界・日本国内の情勢に忠実であることが、より物語に厚みを
加えてます。この物語は3人の「アドルフ」が出てきて、3人の人生が
巧みに交錯している様を描いています。一人目は言わずもがな、
アドルフ・ヒットラー。そしてアドルフ・カウフマンというドイツ人と
アドルフ・カミルというユダヤ人の二人の少年がそれぞれに育っていく様子を
追いながら、そこに日本人である峠草平という『狂言回し』が絡みつつ、
話はすすみます。

ヒットラーについては、ここでは言及しませんが、
カウフマンとカミルの人生がどのように変わっていくのか、という部分が
とても面白い。どちらの立場にも肩入れしない手塚治虫の描き方によって
それぞれに考えさせられるところがあります。
4巻目、話がパレスチナ紛争に及ぶとき、二人のそれぞれの「正義」
とはいったい何なのか、それを突きつけられます。

それにしても、手塚治虫のほとばしるような画力!
10何年も読んでいなかったのにもかかわらず、覚えているコマが
結構あって驚きました。
名作中の名作。未読の方は是非。

by paraplu | 2005-09-26 14:12 | 活字中毒